日々楽しく過ごせてる?

最近、来年度のゼミ(所属する研究室)を決める件で、結構、学生が研究室にやってくる。こういう研究室訪問の際に、私がよくする質問の一つが、「日々楽しく過ごせてる?」だ。学生が大学生活に満足しているのかどうかが気になって、毎年のように同じ質問をしてしまう。

面白いのは、この質問に対する学生の反応だ。普段から楽しそうにしている学生でも、割と退屈そうにしている学生でも、大抵の学生が「楽しいですよ」と即答するのだ。学生の第一印象から「実はちょっと退屈してるんです…」的な答えが返ってくるのかなと予想していることも少なくないのだが、それはほとんどない。

そこで「どういうところが楽しいの?」と突っ込んで聞くと、ほとんどの学生が「自由だから」と答える。とにかく高校までは様々なことで「自由」を感じられなかったが、大学生になってようやく色々なことが許されたような気がして、ホッとしているようなのだ。

おそらく「勉強しろと強く言われない」とか「いつまでもテレビを見ていていい」とか「クラスの中で誰と仲良しとか気にしなくていい」とか「嫌いな授業なら出なくていい」とか、大学生なら別に当たり前のことが、高校生の間は許されなかったんだろう。そういう「自由」の貴重さを噛み締めている段階なのかもしれない。

ただ、その先を聞いてみると意外と口ごもる学生が多い。「こんな挑戦をしている」とか「こんなことを必死で勉強している」とか「外国まで一人で(仲間と)行ってみた」とか「こんな難しい本を何冊も読んだ」とか、そういう話はあんまり出てこない。

高校時代に味わえなかった「自由」を存分に味わうことも大学生活の重要な要素だ。だから、深夜テレビを好きなだけ見たり、休日の間何もせずにボーッとしてたり、気に入らない授業をサボって友達とおしゃべりしたりするのも悪くない。それはそれで、今しか味わえない「自由」だ。

とはいえ、4年間それで終始するのは、ちょっと勿体無い。大学の中でも外でも、新しいことにどんどん挑戦したり、時間を忘れて没頭したりできる機会は結構あると思う。例えば「卒業研究」もそういう対象の一つかもしれない。

だからゼミを決める時、専門や進路、先生との相性なんかも勿論大事だけど、その前にちょっと立ち止まって考えてみてほしい。今、自分は本当に「日々楽しく過ごせている」か。今後、そのゼミに入って「日々楽しく過ごせそう」か。意外とその辺から考えた方が、自分にあったゼミが見つかるような気がする。

 © 小笠原 拓 2015