賀露の砂浜に「白兎」出現

そびえ立つ砂の灯台


そしてそびえる砂の灯台。バケツの屍を超えて。

スコップをバケツに刺してやると、砂の堅固なる塊は、ズ…ズズズ…と音を立てて、ゆっくりと、恐る恐る這い出てきた。バケツにスコップを刺したせいで、砂の塊は少し崩れてしまったようである。

しかし見事な円柱形である。「ギリシア建築の一部のようである。」というと言い過ぎであるが、浜辺ということもあり、「まるで灯台のようだ。」ということは許されるのではないだろうか。

ここからヘラや刷毛、スプーンで削っていくわけである。恐れおののく白兎と、怒りに燃えるサメが生み出されていくわけである。

 

胎動を見せる砂の像


「因幡の白兎」にて登場するサメを作る私。砂まみれ上等!

削って造形していくが、この作業が一番楽しい!砂にまみれても気にならないほどである。子どもに戻ったように見えるだろうが、その真剣さと所業は、まさに職人である。(しかし、そもそも私はいくつになっても子どもである。)

焦りは禁物。焦ると、この砂の生き物はますます思い通りにはならず、しまいには死んでしまう。力を加え、無理矢理に従わせようとすると、簡単に崩れる。力加減が非常に難しく、まさに砂のご機嫌を取りながら削っていく感じだ。やりにくい上司である。

生き物を生かす為には気長にならねばならぬ。たとえそれが、砂で出来た生き物であっても、丁寧に接してやらねばならぬ。

 

そして完成へ…「因幡の白兎」!!


画像の白い服の人はサメ担当。赤い服の人は白兎担当。

私を含めて4人いるため、私と他の2人はサメを、もう1人は白兎を担当した。みんな削り始めると真剣である。そして無言となる。人々が波と戯れたり、風を感じたりし、微笑む場である浜辺に、沈黙に包まれた異様な空間が完成する。その場では、シャッ…シャッ…と、ただただ砂を削る音が、風に流れるばかりである。

 
なかなか個性的なサメが並んでおりますね

無事4体誕生。海を背景に撮るとなかなか感じが出る。

白兎の前足の感じなんか、駆け足しているようである。中央のサメは、不気味に横顔を覗かせ白兎の位置を確認しているようである。両端のサメは今にも食いつかんとばかりに白兎を追い立てている。砂像の周りに無造作に飛び散る砂は、まるで荒ぶる日本海の水しぶきである。

製作時間はおよそ90分。ちょうど大学の講義くらいだ。意外と早くできたと思う。


まとめ

いろいろ苦労した気もするが、思っていたたより簡単だった。砂の強度を配慮しながら削っていくと、思ったよりも簡単に削れる。ただし乱暴に接するとすぐに崩れてしまうため、優しく接してやらなければならない。また、ヘラの角度などには注意が必要だ。角度を少し間違えれば、すぐに砂の造形は狂ってしまう。

簡単に削れる砂の塊を作るためには、水と砂の分量が重要になる。しかし、その正確な分量は不明である。また、不明でもよいと私は考えている。砂を握って固まるくらいがベストであるということさえ把握していれば、分量は微調整で何とかなる。

砂像はなかなか楽しい。大人でも十分夢中になれる。波の音を聞きながら、海のにおいを嗅ぎながら、海の風を受けながら、砂像を作るのも良いと思う。

皆さんもぜひ一度作ってみてほしい。砂と仲良くなれることを祈っております。


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 © 小笠原 拓 2015