日本一の池「湖山池」を一周歩いてみた(あかも🌸はな)
公開日:2020年5月19日


湖山池から見える夕日(写真はこの記事から)

私と湖山池との出会い

2020年4月、私は21回目の誕生日を迎えた。世間ではコロナにより外出自粛が求められている中、私はあることに挑戦した。それは、日本一大きな池といわれる湖山池を一周することだ。

なぜ、この挑戦を試みたかというと、私がなんとなく湖山池に縁を感じているからである。私は大学受験前期に失敗し、高校3年間で1度も目指したことのない鳥取大学に入学することが決まった。合格発表後、家族で家を探しに鳥取に来たとき、最初に行ったのは湖山池公園という湖山公園の横にある公園だった。

家をいくつか見て回り、最終的に決めた家は目の前に湖山池広がっている。あれから3年、山陽から山陰へ来て慣れない1人暮らしが始まり、本当にいろいろなことがあった。嬉しいときも悲しいときも辛いときもいつも湖山池が見守ってくれた気がする。勝手にそんな思いを抱きながら毎日湖山池を眺めていた。

鳥取に来て湖山池について知り、家の前の道路には「湖山池一周コース」という標示があり、いつかは一周したいと思っていた。これまでの大学生活がそんなに忙しかったわけでもないが、何気なく日常をすごしているうちに挑戦する機会を失っていた。そこでこの自粛中、おうち時間というのにも少し飽きてきたので記念すべき21歳の誕生日に私のこれまでの悲願を達成させようと挑戦することにしたのだ。


湖山池一周コースの全貌


出典:「鳥取市の陰海岸ジオパーク情報」より

調べたところ、湖山池一周コースはなんと約16キロもあるらしい。もし、歩く前にこの情報を知っていたならば絶対に歩かなかっただろう。いくら悲願とはいえ16キロも歩ける自信はない。そして今後もう歩くことはないだろうと思う。地図で見てもなかなか大きい池だということがわかる。さすが日本一大きな池と言われているだけはある。こんな大きな池を一周歩いたと考えると、我ながらよく歩いたとほめたたえてやりたい。

地図にもあるように池沿いにいくつもの観光名所がある。今回は観光名所をまわることが目的ではなかったため無視して(あることを知らなかっただけ)途中で見つけた公園で遊んだり、休憩所のような場所で池を眺めたりとにかく自由に楽しんで歩いた。観光名所をオリエンテーリングみたいにして湖山池を一周してみるのもいいかもしれない。鳥取の面白い場所を発見できそうだ。ただ、そのときは間違っても歩くのではなく絶対に車で行きたいと思う。


果てしなく広がる湖山池の風景


ちょっと感動的な美しさ。

これは、附属小学校・中学校の横にある湖山池公園。ここが湖山池一周を目指すきっかけとなった例の公演である。家から歩き始めて30分弱の所にある。石段で写真みたいに池の近くまで下りられるようになっていたり、道が舗装されていてお散歩コースみたいになっていたり、とてもきれいなところだった。3年前は駐車場に車を停めて家族で池を眺めただけだったからこんなにきれいな場所だとは思わず感動した。と同時にまだまだ長い道のりであることを思い知らされるほど池は大きく果てしなく広がっていた。


春を感じる風景。

同じく、湖山池公園。こんな風に花壇にきれいにお花が植えられている。誰がお手入れしてくださっているのだろう。こうした花壇は公園内のあちらこちらに作られていて公園をより華やかに彩っていた。思えば自粛前は冬だった。コロナによる自粛であっという間に春へと季節が移り替わっている。私は四季の中で春が一番好きだ。その春の訪れに気づく間も与えないコロナの自粛にやり場のない憤りを覚えながら、それでも春に触れることができた喜びをかみしめながら歩みを進めた。


公園の遊具。ちょっと懐かしい気分になる。

こちらは、歩いていたらたまたま見つけた公園。ブランコと鉄棒と運ていと少し変わった遊具が1つあった。どこか懐かしい雰囲気のする公園だった。公園が見えた瞬間、なんだか幼少期に戻ったような気分になってブランコに飛び乗った。全力でこぎ始めてやっと気づく。私はブランコに乗ると酔ってしまうのだと。少し気持ち悪くなったのになぜか逆上がりの練習を始めた。

小学校1年生のとき、はじめて逆上がりができたときのことを思い出す。一番下の妹の出産で入院していた母に頑張っているところを見せたくて父と毎日練習した。なかなかできなくて泣きながらも頑張った。あれから14年。1回できたし身体は覚えているだろう。そんな考えは甘かった。何回やってもできなかった。21歳になりたての老体に鞭を打ちながらやっと1回だけ成功することができた。思わぬことで体力を使い、疲労感を抱きながらまた歩き出す。


池の向こうに見える青島。

わ!青島じゃと思ってなんだかすごく有名なところに来た気分になった。大学に入学したばかりの頃、新歓で青島に肝試しに行った。なんかよく覚えていないけど、それなりに怖かった気がする。そして怖すぎてその日は仲良くなったばかりの友達に家に泊まってもらったのに眠れず、翌日のTOEICに2人で遅刻しそうになった。そんなこともあったと思い出に浸りながら青島の駐車場にある湖山池の地図を見た。一周するにはまだまだ先が長そうだ。(地図の写真も撮っておけばと後悔)


遠くに我が家が見える…(気がする?)

ずーっと向こうにある対岸の右側、少し白っぽい建物が並んでいるように見えるのがおそらく私の家があるあたりだ。もうこんなに歩いたのかと感動をかみしめながらもさっき青島で見た地図ではまだまだあったなと軽い絶望を感じる。疲労感に見舞われながらも日が徐々に落ちていくのを見て焦り歩みを速めた。


飛び立つ鳥。我ながら上手く撮れた。

川で鳥が飛んでいた。いい感じに写真が撮れたと思うので見てもらいたい。私の地元には川がないので川を見るとなんだか不思議な気持ちになる。鳥取は川が多いというような気がする。疲労困憊な状態を少しでも変えようと景色に集中した。そんなときに飛び立つ鳥を写真に収めることができたのはラッキーだったと思う。土手があったのでもう少し元気だったら下りていたかもしれないが、このころにはもうそんな余裕はなかった。


明かりのない道では時々物騒な音が…


気づかぬうちに、夜が近づいてくる。

川を通り過ぎたところに屋根のある休憩所のようなところがあったのでそこで少し座って休憩した。座るともう一生立つことができないのではないかと思うほどに体が重くなり、足は鉛のようだった。足は鉛のようという表現に対して大袈裟だと思ってきたタイプの人間だが、本当にあの時の私の足は間違いなく鉛そのものだった。そんなに長い休憩ではなかったのに休憩を終えるともう日が暮れていた。早く歩かないとという気持ちだけで足を動かした。


こんな綺麗な月の夜だけど…

道路の標示も見えないほどにあたりは暗くなっていく。その日は鳥取にしては珍しく快晴だったので、月も星もとてもきれいに見えた。ただ、こんなに月がきれいに見えるということは街灯が全くないということだ。人気も明かりもない道では山からときどき物音がした。それはそれは恐ろしいものだった。


私の足よ、あれがゴールの灯だ!

おそらくあちら側がゴール。鳥取の夜って暗いなあというのが印象だったが、意外と明るい。ずっと暗がり続きで灯りが恋しい。早く座りたい。その一心で歩いた。もう歩こうと思わずとも足が動いていた。そして…


ついに念願のゴール!!

これは家の前の道路標示。やっと一周歩き切った。かかった時間は4時間半。休憩も公園で過ごした時間も含めてもこんなに長時間歩き続けることはなかなかない。ひたひたに浸ることができるほどの達成感があった。


終わりに〜素晴しい達成感を味わいたい人ならぜひ挑戦して!〜

このあと食べたファミチキは、後にも先にもこれが1番といえるほど格別においしかった。翌日から全身筋肉痛に苦しめられるとも知らず、ただただ達成感に浸り眠りについた。

湖山池一周歩くことは、とてつもない疲労感と筋肉痛に苦しめられるということの代償にすばらしい達成感を味わうことができる。ただ、もう1度挑戦しようと思う人は少数派ではないかと思う。それでも、鳥取に住んでいる人にはぜひ1度挑戦していただきたい。

湖山池
こうしてみると、やっぱり大きい!


 © 小笠原 拓 2015