正しい遅刻者への対処法

大学の教員にとって遅刻者への対象法は意外と気を使うものである。小中高時代と違い、起こしてくれる親もいなくなった一人暮らしの学生が時間通りに教室に来るのは、(一人暮らしでなくても)意外と大変なものだとは思う。とはいえ、授業の途中に教室に不意に学生が入って来る際、教員の側も対処法に苦慮しているのである。

一見して間違いと分かる対処法に、授業開始直後にドアを閉め、教室から締め出してしまうというものがある。1分でも遅刻したら授業に参加する資格はないという厳格な姿勢を示すものであるが、さすがにこれは現代では逆に学生に訴えられてしまうだろう。ツイッターで呟かれて炎上してしまうかもしれない。

遅刻の理由を問いただし、理由の内容に応じて、叱責を加えるというのも正しい対処法とは思えない。大学生と言えば、もういい大人であり、遅刻の理由も様々である。生活上の問題について、人前で叱責を加えることが果たして適切かという問題もある。何より聞いている他の学生にとっても迷惑であろう。

となれば考えられるのは、遅刻という行為について何ら追及せず、授業に参加させるということになるが、これも正しい対処法とは言い難いかもしれない。ちなみに普段の私はこの方法なのだが、ひょっとするとこのような姿勢は、学生の遅刻を習慣化し、将来に禍根を残すかもしれないからである。(だから「私は学生には不親切な教員です」と言っている。)

最近考えた、いつかやってみたいと思っている対処法を最後に紹介しよう。これは病気になって、学生が学校に来れない苦しみをしみじみ理解した結果、思いついたものである。遅刻した学生に対し、当日のレジュメを手渡しながら、「遅刻しそうな事情があったのに、よく来てくれたね」と告げ、握手をするのだ。

多くの学生は遅刻をした時、悪いと思いながら教室に入って来ているものである。とはいえ、注意されることを予測して、それを怖がってないことを示すために、あえて悪びれず入ってこようとするような学生がいない訳ではない。そんな時、むしろ遅刻しそうになったにも関わらず授業に出て来たことを賞賛すれば、遅刻したことを逆に申し訳なく思い、次回からは態度を改め、遅刻しないよう心がけるようになるのではないだろうか。

もちろん、私はそこまで度胸がないので、今のところ上記のような対処法を試した経験はない。だけど、大教室で、大幅な遅刻に悪びれもせず、私が話している目の前を横切ろうとする学生なんかがいたら、一度はやってみたいなと思っているのである。


※私の「国語学習指導分析Ⅰ」を受けた人なら、元ネタは分かるよね(笑)

 © 小笠原 拓 2015