雨の草むらで出会った、びしょ濡れの子猫との3時間半(中林由芙)
公開日:2025年8月10日

雨の中、草むらから聞こえた鳴き声

6月の豪雨の夜。家の前の草むらで、ずっと「ニャー」と鳴いている小さな子猫と出会いました。

その日、私は3 時間半のあいだ、その子と向き合うことになります。びしょびしょの体、小さいながらずっと泣き続けている子猫、そしてどうすばいいのかわからない私…その顛末をご報告したいと思います。


ここからずっと聞こえる。

最初は気のせいかと思ったけれど「ニャー」という鳴き声が確かに聞こえました。気になって、傘を片手に草をかき分けると、そこにはずぶ濡れで震えている子猫がいました。


びしょびしょの攻防戦から無事保護へ

「ずっと鳴いてるってことは、元気だな」そう思いながらも、そのままにはしておけず、捕まえようとするも…これがなかなかの難関。


自由気ままに逃げ回る猫

捕まえるのに1 時間、びしょびしょの攻防戦。草むらを逃げ回る子猫をタオルを持って追いかけた。そして、なんとか1 時間後、ようやく保護に成功。

びしょびしょで震えているその小さな体を、タオルでしっかりと包み、抱えた。


お風呂
であっためて、少しだけ元気に

家に着いてすぐ、逃げないようにお風呂に直行。タオルで優しく拭いて、あったかい牛乳を少しだけあげました。牛乳をぺろぺろ飲んでくれる姿にちょっと安心。


家でもお構いなく鳴き続ける

一晩家で過ごすことも考えたが、住んでいる家はペット不可なのですぐに断念。とりあえず落ち着いたら、今度は一緒にお散歩することにした。傘の下で、濡れた道をゆっくり歩きました。雨は止みかけていて、子猫の目にも少し力が戻ってきたように見えました。


小さなお口がキュ
ート♡

この子、どうすればいい?

でもここからが、ある意味一番難しかった。「この子、どうしたらいいの?」という問いに、私はすぐに答えを出せなかったのです。

スマホで調べてみると、「まずは警察に相談を」と書かれていて、半信半疑ながら電話してみることに。状況を話すと、警察は、「子猫を預かっても保健所に連れていくことしかできないため、この先にこの子にとって良い環境であるかはわからない。」「安全な場所に返してあげるのがいいのでは」と教えていただきました。


お巡りさんは適切なアドバイスをくれた。

また、どこかで会えたら

悩んだ末、安全な草むらに連れて行って、そっと下ろしました。すぐにスッと歩き出し、自動販売機の下に隠れて「にゃー」と鳴き始めました。

あ、入っちゃうんだ、(笑)とは思ったが、私がその場を離れようと思ったときに、近くにいたデカめの猫が子猫を心配そうに眺めていたので託すことにした。

3 時間半という短いけれど濃密な時間。あの子がまた、どこかで元気に生きてくれていたら――そう願っています。


 © 小笠原 拓 2015