空港でグランドピアノを弾いてみたい(深田真由)
公開日:2025年5月22日

はじめに

この半年間、密かにやりたいと思っていることがある。それは鳥取コナン空港にあるグランドピアノを弾くこと、いわゆるストリートピアノというやつをやってみることである。


空港スマイルピアノ!


ピアノとの出会い

私は約半年前から鳥取コナン空港でアルバイトを始め、毎週2回程度は空港に足を運んでいる。その時にグランドピアノの存在を知り弾いてみたいと思っていたが、それはいまだにできていなかった。なぜなら私の勝負できる曲が、童謡「かたつむり」一曲であるためである。

バイト中、ときおり館内で響く曲はクラシック曲やコナンのテーマソング、その他アニソンやJ-popなど難易度の高い曲が多く、しかもそのどれもがクオリティーが高い。

そうではない場合は子ども「ピアノがあるー!」と言って鍵盤を叩いたり、「かえるの合唱」のような学校で習った簡単な曲を弾いたりするパターンが多い。その中でいい大人が本気で弾くのに「かたつむり」というのは気恥ずかしく、これまで近づくことができずにいた。

とはいえ、何事も経験である。何より、やってみることさえできれば、それをウェブサイトの記事に書くこともできる。(記事に書くのが前提になっているのもどうかと思うが…)という訳で、今回勇気を出して挑戦してみることにした。



まずはキーボードで練習

この日はバイトの時間よりも少し早めに来て、まずは2階にあるキーボードに近づく。ここは人目に付きにくいうえ音も響かないので少しだけここで練習してから行くことにする。

練習するといっても、私には「かたつむり」一曲しかない訳で、そんなに時間が必要なわけではない。とはいえ、練習することで、少し緊張感が薄れた。


空港の片隅にたたずむキーボード


名簿に名前を書くか否か…

軽く練習できたので、いよいよピアノに向かう。日曜日のお昼時であるためいつもよりも空港利用客が多い。また、3月に空港の愛称化10周年を迎えたためか、コナングッズ(?)販売の臨時の売り場がピアノの真正面に構えられており、売り場のお姉さんが暇そうにピアノの方を見ている。めちゃくちゃ気まずい。

お姉さんを視界の端に捉えつつピアノの方を見ると、左手側に名簿があることに気が付いた。ものの30秒程度で終わる演奏に名前を書くべきなのか考えたが、ビビッて書かずに座った。


これに名前は書けない…


いよいよ演奏♪


緊張の一瞬!!

軽く鍵盤をたたいてみると、思っていた以上に音が反響した。数人の空港利用客がこちらに目線を向けているのが分かる。本当にこちらに注目しないでほしい。浅く腰かけていよいよ弾き始めると、テンパって序盤で間違えてしまった。

気を落ち着かせて改めて最初からやり直す。少し詰まりつつも最後まで弾ききった。パッと顔を上げると数人が笑顔でこちらを見ていた。もちろんSNSで見るような人だかりができることはないが、空港に「かたつむり」を響かせることができた。

気恥ずかしさを覚えつつも、やってみたかったストリートピアノができて満足である。そそくさとその場を離れ、バイトに向かった。ちなみにその後バイトで「誰かがかたつむり弾いている音が聞こえた」と、すこーしだけ話題に上がっていた。


まとめ

今回の挑戦で一番ハードルの高さを感じたのは椅子に座る瞬間であった。その瞬間「ピアノを触っていただけ」だったのが「本気でピアノを弾こうとしている」と、自分の認識も周りの視線も変化し、そのときが一番緊張感が強かった。

また、私にとってはある種ピアノの発表会のようなもののため、気軽に二度三度やれるものではないとも感じた。ただ、音楽を広い空間で響かせることへの楽しさも理解できたため、次はできる曲を増やして挑戦したい。


 © 小笠原 拓 2015