はじめに
以前の記事で書いたように、9月の初めに和歌山に行った。卒業生の公開授業を見るためであったが、せっかく和歌山に来たので、何か珍しい体験をして、記事に書きたいなと思っていた。
そこで卒業生に、「この辺にいい感じの本屋ってない?」と聞いてみた。そこで紹介された本屋が本当にいい感じだったので、ここで紹介したい。
バスに乗って本屋に行く
紹介された本屋は、和歌山駅から少し離れたところにあった。幸い、その本屋のすぐ近くまでバスが通っていたので、そのバスに乗ることにした。

9月20日はバスの日だと初めて知った。
最近、学会等でもバスに乗ることが多いが、それらのバスはほとんどが交通系ICカードを使うことができる。以前の記事でも紹介したように、筆者は随分前から交通系ICカードを持っているので、とても便利である。ただ、鳥取ではバスに乗ることはほとんどないので、鳥取のバスが交通系ICカードを使うことができるかどうかは、現在でもわからない。
そんなことを考えながら、10分程度バスに揺られると、目的地に着いた。

本町文化堂!
「本町」というのはこの辺りの地名であった。(バス停の停留所が「本町三丁目」という名前だった。)いかにも本屋にふさわしい地名である。ただ、着いた時は、まだ営業時間外だった。そこで、近くのデパートで昼食を食べてから、改めて来ることにした。
入り口には古本が並ぶが…
昼食にデパートでトンカツ定食を食べて、改めて本屋に向かった。さっき来たときは気づかなかったが、入り口の前に、「本」と書かれた小さな看板があった。確かに「本町文化堂」という屋号自体、本屋っぽくはあるが、「本町」が地名である以上、屋号自体が本屋を直接示しているという訳ではなかった。しかし、この看板を見れば、確実に本屋であることがわかる。

本屋以外の何物でもない。
とはいえ、お気づきの方も多いと思うが、ちょっと入りにくい外観ではある。しかも店がオープンしたとはいえ、入り口付近には古本が雑然と並んでおり、一方で、外から見る限り、店の中はお世辞にも明るいとは言い難い。はじめての人間はちょっと躊躇する感じである。

迷宮への入り口?
但し、筆者は比較的こういう入りにくい書店には慣れており、もっと「入りづらい」書店にもいくつも遭遇している。という訳で、それほど躊躇することなく、中に入っていくことができた。

入り口付近にあった古本。古本屋好きにはおなじみの「BRUTUS」がある。
中に入ると完全に新刊書店
中に入っていくと、所狭しと本棚が並んでおり基本的に古本屋ではなく、新刊書店であった。といっても、所謂よく見る「チェーン店の本屋」や「町の書店」のような品揃えではなく、かなり店主のこだわりが見て取れるセレクトであった。個人的に言えば、かなり好みの本があちこちに並んでいた。

ここは映画や音楽に関する本が並ぶ棚。
学生時代によく読んでいた蓮實重彦のインタビュー本も置かれていた。「「蓮實重彦って今でも現役で本を出しているんだな〜」と思いつつ、つい手に取ってしまう。かなり欲しい本ではあったが、他にもいろんな本があるので、ここは一旦、本棚に返すことにした。
そんなこんなで、色々見て回っているうちに、何故かトイレに行きたくなってしまった。一旦、さっき昼食を食べたデパートに戻り、トイレに行ってから、改めて店を訪問した。ちなみに本屋に行くとトイレに行きたくなるというのは、「青木まりこ現象」と呼ばれ、所謂「本屋あるある」の一つらしい。
買う本を決めるのに悩む
筆者は、本屋に行くと、だいたい複数の本を買うことが多い。その際、複数の本がバランスよくバラエティに富んだ本が買えると満足するという変な嗜好をもっている。ということもあって、本を選ぶときは一冊一冊を選ぶというのはもちろんのことだが、複数の本をセットで見た時、バランスが良いかどうかについても拘りながら選ぶことになる。(だから時間がかかる。)

漫画もかなり充実してるが、個性的なラインナップである。
ちなみに、最近はジン(独立系の出版社や個人が出している小規模出版物)を買うことも多いが、この店は、全く置かれていない訳ではなかったが、それほど多くのジンを扱っているという訳ではなかった。
かなり時間をかけて、古いマンガや好みのエッセイなど、比較的軽く読めそうなものを数冊買うことにした。セットとしてのバランスも比較的良いものが選べたと思い、ホクホクしてレジに向かった。
店の人と話をして、鳥取との縁を知る
レジで会計を済ませた後、せっかくなので、少し店の人(女性)と話をすることにした。この店は二人(夫婦?)でやっているとのこと。数年間、別の場所で本屋を営んでいたが、1年ほど前にこの場所に移ってきたという。近くにミニシアターができ、最近はその映画館ともコラボして、本を売ってもらったり、映画に関する本を扱ったりしているそうだ。
またインターネット上で、ポッドキャストも行っており、いろんな雑談を発信しているという。ちなみに、その出演者(店の常連さん?)のなかにアーティストさん(アーティスト名は聞いたが忘れてしまった。)がいて、その方が鳥取大学出身なのだという。比較的若い方のようなので、ひょっとしたら私の授業を受けていたかもしれない。

ちょっと見えにくいが本屋関係の本も結構並んでいた。(筆者は本屋関係の本をよく買います。)
また、鳥取とのもう一つの縁として、東京の雑誌にこの店が紹介された際、鳥取の「汽水空港」という書店も一緒に取り上げられていたそうだ。汽水空港の近くにも、最近ミニシアターができたということもあり、書店と映画館の取り合わせが面白いということで、取材されたらしい。意外なところで鳥取との縁を確認することができ、無事にこの記事にも鳥取要素が加えられることになった(笑)。
おわりに
鳥取市にはかつて、「セレクト系本屋の元祖」のような存在として、定有堂書店という本屋があり、全国的にも知られていた。残念ながら数年前に閉店してしまったが、筆者も何度も利用していたので、とても残念に思った一人である。
今回訪れた「本町文化堂」は定有堂書店とは雰囲気は少し異なるが、「もし近くに会ったら通いたいな」と思わせる点では、相通じるものがあった。
鳥取から和歌山へ行くには特急を乗り継いで4時間かかるので、簡単に来ることはちょっとできそうにないが、また和歌山に来る機会があれば、是非、また訪れたいと思う。

左にある、みうらじゅんの本が気になったが結局買わなかった。
