“あの洋館”の中に偶然入って来た(小笠原拓)
公開日:2017年3月14日


か、かっこいい…できたら住んでみたい


いつかは住んでみたい場所の「気になる洋館」

以前からブログでも書いているが、鳥取の中心市街地近くに住むことに憧れている。というか、あの辺りの良さが最近になってようやく分かってきたようだ。そろそろ「違いのわかる男」になって来たのかもしれない。(←表現が古くてすみません。分からない人は無視してください。)

で、休日などに、家探しも兼ねて、中心市街地の良い物件がありそうなところをぶらついたりしている。中でも鳥取東照宮や鳥取市立歴史博物館(やまびこ館)、さらには樗谷公園のある辺りは、とても落ち着いた雰囲気があって、いつか住んでみたいなと思いながら、歩いている。

そのお気に入りの場所にある「ある洋館」が随分前から気になっていたのだが、先日、偶然にも中に入ることができたので、その様子をレポートしてみたい。


偶然目にした展覧会の看板に導かれて…

つい先日、暖かくなって来たので散歩がてら樗谷公園近くを散策していた帰り道、ふと以下のような看板が目に飛び込んで来た。


「ミュージアムとの創造的対話」???

どうも、鳥取県立博物館の主催で、県立博物館とその周辺にある建物を舞台にした大掛かりな彫刻の展覧会が開かれているようだ。しかも、ここに関しては無料だという。で、ふと上を見上げてみると…


あっ、ここはもしかして…

この洋館は「グランドアパート」という、戦前に建てられた洋館で、戦後は進駐軍の宿舎として使われていたものである。90年代ごろまで、下宿などとして用いられていたようだが、現在は使われておらず、歴史的な価値が高い建物として、時折、一般公開がなされている。


「県民の建物100選」にも選ばれている。

以前から一度入ってみたいな、と思っていたのだが、なかなかタイミングが合わず、中に入ることが叶わなかった。にも関わらず、今日は自由に、しかも無料で入れるという。こんなチャンスはそうそうないと思い、早速入ってみることにした。


洋風と和風が混在する空間が広がる…

もう何年も使われていない建物はさすがに古びており、ちょっとしたタイムスリップ感覚を味わえる。建物の中は基本的には洋館なのだが、所々、和風のテイストが施されていて、ちょっと不思議な空間である。


進駐軍の司令官が過ごしたという茶室兼居間。そう言われるとそんな気がしてくる…


何となく、古そうで高そうな道具が並んでいる…


和と洋の融合?を感じさせる天井。


ベランダの感じは完全に洋館。


教会のような厳粛な雰囲気も感じさせる…(手前にあるのが今回の展示作品)

この部屋を見ていた時、友人が昔この建物に下宿していたという年配の男性と偶然出会った。その頃は、夏場、夕方になると、この窓の外のベランダに出て、食事をしたりしたこともあったそうだ。う〜ん、羨ましい!


一番気に入ったのは…

タイムスリップ気分を感じながら、狭い建物の中をウロウロと散策していたが、中でも気に入ったのが、この建物の階段である。


何とも言えない独特の曲線美!

   
手すりの形もユニークで歴史を感じさせる。 

今ではちょっと考えられないような急勾配の階段で、昨今のバリアフリーなどとは完全に対極にあるが、見た目的にはやはり「カッコイイ!」と思わずにはいられない。独特の曲線美や無駄に回転している感じなど、機能性的にはどうかと思うのだが、それでも、現在の建物にはないカッコ良さが、この階段に凝縮しているような気がした。(便利かどうかは、この際、目をつぶるということで…)


終わりに

偶然出会った男性曰く、決して当時(80年代から90年代頃)も下宿としての家賃は高くなかったそうだ。確かに、お風呂もなく、トイレも共同なので、さすがに当時でも住みやすい建物とは言い難かっただろう。

ただ、場所的には、すぐそばにホタルの名所でもある樗谷公園があり、周囲は閑静な住宅が広がるなど、鳥取でも有数の「豊かさ」を感じられる場所である。もし当時、自分が学生でここに住んでいたら、どんな学生生活を送っていたのか、とちょっと想像したくなるような、そんな場所だった。

鳥取は、どちらかというと、「自然」とか「田舎」とかそいういったイメージで捉えられることが多いが、決してモダンな一面がなかった訳ではない。特に中心市街地の中には、そういった雰囲気を感じさせる建物がまだまだ残っている。

他県から鳥取に来られる方々には、鳥取の自然だけでなく、この建物が醸し出すような「モダンな」一面にも注目してほしいなと、個人的には思っている。

なお、この展覧会は、3月20日まで続くそうなので、興味のある方は別の建物も含めて、是非とも訪れてみてください。鳥取の新たな一面を感じられるかもしれませんよ。

展覧会についての詳細はコチラをクリック。


一階に描かれていた壁画。昔、ダンスホールとして使われていた名残だそうだ。

                      

                      (取材協力)鳥取県立博物館 樗谷グランドアパート保存会


 © 小笠原 拓 2015