人は、あてもなく彷徨っている時、何か不思議な力に導かれているのかもしれない
偶然の出会い
ドライブで大山の方へ向かっている途中、海辺を通りかかった。気づけば私は車から降り、海辺を彷徨っていた。海辺を見るとそこを歩きたくなるのが私に染みついたクセ、もはや本能である。
漂流物を銛代わりに、海の男気分。
海辺を歩きながら、陽に照らされて輝く海を見たり、風や波の音を聞いたりして、「風流だ。」などと心地よい気分になるのではない。いや、たしかにそれもあるのだが、それは中心ではない。
私が熱心に目を凝らす先には地面があり、その手が触れるのは漂着物である。興味深い漂着物や、まだ見ぬクジラやイルカの骨を探し求めているのだ。つまりは「ロマン」を観察、または収集するのだ。
そうやって、漂着物を探しながら海岸を歩いていた時、ある不思議な場所に辿り着いてしまった…
ただの草原のように見えるのだが、その奥にはピンク色のオブジェが立っている。
その場所の入り口には、「御来屋夕日公園」と書かれた看板があった。一見すると昆虫が草を食んでいそうな、草原が広がるばかりである。しかし奥の方に何か、ピンク色の人工物が立っている。
ハートのオブジェ「君よ、くぐるのか、くぐらないのか。」
「幸せになれるかも」をアピールしてきている…。くぐられたがっている…。
そばに寄ってみるとハート形のオブジェであった。電飾が巻かれており、夜になると光り輝く仕掛けになっている。材質は木のようだ。
高さは170㎝ほど。厚さは、かなり薄い印象を受けた…2㎝ほどだったか。そして隣には「ハートをくぐると幸せになれるかも」と書かれた看板が立っている…。
しかし…このオブジェ、「幸せになれるかも」を押し出してくる。まったく、何なのだ。このあからさまな誘いは。こんなものに私が乗るとでも思っているのだろうか。否。乗るわけがない。
そもそも、幸福とは神頼みでは得られない。すなわち、天から授かるものではない。地を這い、必死で生き、自らで掴み取るものなのだ。私はこんなものに…だまされは…しない…!
って、まぁ、だまされてもいいか~♪もう、くぐっているこの瞬間が幸せですね♪うふふふふ☆
えー…くぐってみた感想は、くぐるという行為そのものの楽しさと、「幸せになれるかも」という誘いに乗ることの楽しさ、この2種類の楽しさがありまして…とても幸せな気分になった…!!
まぁ、そもそも私は人生を神頼み、運まかせで歩んできた「ギャンブラー」である。天からの幸福というものも、この世には存在するのかもしれない。少なくとも、私の人生は今のところ天の意思のみで進んでいる。(これ、何の話?)
さらに、くぐった先にはオンブバッタがいた。思えばオンブバッタなど、ここ何年かは見ていなかった。おそらく小学校以来ではないだろうか。その懐かしい姿と、鳥取県で今なお繫栄する自然界に、心打たれたのである。これは…紛れもなく幸福…だ。
おそらくこのハートは、ただのハートではない。何か…摩訶不思議な力が込められているのだ。
佇む謎の物体…、発明王の存在を感じる…!
ハートのオブジェを堪能した後、そのすぐ近くに、またもや謎の物体を発見した。
初めて見た奇妙な物体。これは一体…??
まず、材質は金属である。台のようになっており、人工芝と金属製のハートがのせられている。そして、台には「黒い取っ手のような物」がついており、この台は回転する。
…ということは、この物体の用途は、取っ手を持って回転させて遊ぶのか、それともハートから風景を覗くことで幸福が得られるという、先程のハートのオブジェと同じような「まじない」か…。
私と友人はこの謎の物体について考えた。そして、考えているうちに、「黒い取っ手のような物」は、実は取っ手ではないということに気づいたのである。
そもそも基本的に取っ手はU字型をしているものだ。どこかで見たことがあるような、この物は…。
そう…スマートフォンスタンドであったのだ…!
このスタンドにスマートフォンを固定し、シャッターを切ることで、ハート越しの風景が撮影できるというわけだ。さらに、台の上に人工芝を敷くことで自然な風景を演出できるのだろう。そう、こんな風に…
おそらく恋人と並んで撮ると、い~い感じになるのだろう。幸福感溢れる写真になるのだろうよ…。
幸福をもたらすハート、自然を演出する人工芝、景色の選択を可能とした回転する台、セルフタイマーに対応するスマートフォンスタンド、そして遠近法!すべてが計算されつくした設計…!
こうしてしまえば、高額な費用をかけて、撮影用の巨大なハートのオブジェを作らなくても良い。しかも特定の位置に設置するよりは自由度が高い。
何だ、何なのだ、この場所は…。発明王の存在を感じる!見事…、御見事…!!きっとこの場所を作った人は、あらゆる幸福をプロデュースする天才発明家なのかもしれない…(って、どんな発明家だ??)
終わりに〜あるいは幸福について〜
御来屋夕日公園を出てから小雨が降った。「幸せになれるかも」と言っておきながら雨である。
「幸福とは天からの授かり物ではないのだな。」とも思ったが、その後、海と人々の街を繋ぐ虹が架かった。なるほど、これは確かに天からの幸福だ。このような見事な虹は久しぶりに目にした。
偶然出会った御来屋夕日公園は私に確かな幸福を与えた。私は「神秘」やオカルトの類のものにはあまり縁がないタイプの人間だが、この場所は、ひょっとすると「パワースポット」というものなのかもしれない。
貴方にも幸福があらんことを…
興味のある人は一度訪れてみて欲しい。ひょっとすると、思いがけない幸福と巡り会えるかもしれない。